<敢えて、エビデンスではなく、院長の雑感>
「マンジャロ使っているのに体重が落ちなくなってきました」という相談はダイエット治療で通院中の患者さんのほとんどのケースで出てくる相談です。これについてはいくつかの理由があると考えられています。
よく言われているのが、糖質制限が続くことによる代謝の省エネモードと言われるものです。これは、マンジャロを使っている場合に限りません。ダイエット目的で糖質制限をしていると、身体側がそれを「飢餓状態(そう簡単に食事にありつけない危険な状態)」だと判断してしまい、基礎的な代謝を落として必要エネルギーを少なくすることでより長く生存しようとするという考え方です。たしかに、ダイエット中に体重減少が進まない、いわゆる「停滞期」に入った時に、この「飢餓状態」を前提として対策をとることで、再び体重が減少し始める患者さんも結構いらっしゃいます。やはりそういった状況が実際に起きているパターンもありそうです。
他にも、セットポイント理論というものもあります。身体そのものが自分の体重がだいたいこれくらいだと設定して、増えても減ってもその設定した体重に戻ろうとするという考え方です。人間を含め、生物には恒常性(ホメオスターシス)といって、生命活動をある一定範囲の中に留めようとする性質があるとされています。例えば身体が自分の体重を65kgくらいだとセットした時、ダイエットして60kgを下回ろうとすると65kgに戻そうとする、逆にどんなに暴飲暴食をして70kgくらいに体重が近づいても、暴飲暴食を止めれば無理に痩せようとしなくても自然と65kgあたりまで戻ってしまう。そういった自動調整機能のようなものが体重においても働く様です。実際に、停滞期を乗り越えて、一段体重が落ちると、今度は多少体重が増えてもその停滞期の頃の体重が壁となってくれて、それ以上には増えにくいという事はよくある減少です。
単純に摂取したカロリーと、運動など意識的に消費するカロリーの差し引きだけで語れない仕組みが、このように色々と働いているようです。
食事量を制限する、運動を追加する、食事のリズムを見直す、あるいはダイエットに影響しないと思っていた何かが思っていた以上に影響しているなど、原因も対策も多岐にわたります。我々は一人ひとりの患者さんと話し合い、一緒に考え、納得した上で治療を続けられることを大切にしております。