はじめに
糖尿病の治療、もしくは糖尿病予備軍における対処法として、最も基本であり重要なのが食事療法です。
薬物療法や運動療法も大切ですが、毎日の食生活を見直さなければ血糖コントロールはそうそううまくいきません。
この記事では「糖尿病 食事」で検索された方に向けて、食事療法の考え方や実践のポイントをわかりやすく解説します。
糖尿病における食事療法の目的
糖尿病の食事療法は「糖質を減らせばよい」という単純なものではありません。
大切なのは、必要な栄養をバランス良くとりつつ、血糖値の急上昇を防ぐことです。
食事療法の目的は以下の通りです。
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適正な体重を維持する
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血糖値の安定化
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脂質・血圧の改善(動脈硬化の予防)
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糖尿病合併症の予防
1日の摂取エネルギー量の考え方
摂取エネルギーは、身長・体重・活動量によって異なります。
標準体重の計算
標準体重(kg)= 身長(m)× 身長(m)× 22
例:身長170cm → 1.7 × 1.7 × 22 ≒ 63.6kg
エネルギー必要量の目安
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軽い労作(デスクワーク中心):25〜30 kcal × 標準体重
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中程度の労作(立ち仕事中心):30〜35 kcal × 標準体重
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重い労作(肉体労働中心):35 kcal以上 × 標準体重
栄養素のバランス
糖尿病食では、三大栄養素の比率を意識します。
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炭水化物:50〜60%
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たんぱく質:20%前後
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脂質:20〜25%
炭水化物を極端に減らす必要はなく、食物繊維を多く含む炭水化物(玄米・雑穀・野菜)を選ぶことが大切です。
食事の工夫ポイント
1. 食物繊維を意識
食物繊維は糖の吸収をゆるやかにし、食後高血糖を防ぎます。
野菜、海藻、きのこ、豆類を積極的に取り入れましょう。
2. 主食は「量」と「質」を調整
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白米 → 玄米や雑穀米
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麺類 → そばや全粒粉パスタ
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パン → ライ麦パンや全粒粉パン
3. タンパク質をしっかりと
筋肉量を維持し、インスリンの効きを良くするためにもタンパク質は重要です。
魚、大豆製品、鶏肉、卵などをバランスよく摂取します。
4. 脂質は「質」を重視
動物性脂肪(バター、肉の脂)は控えめにし、オリーブオイルや魚の脂(EPA、DHA)を取り入れるのが理想です。
5. 甘い飲み物に注意
清涼飲料水や加糖コーヒー・紅茶は血糖を急上昇させます。
水、お茶、無糖コーヒーがおすすめです。
食べ方の工夫・外食やコンビニでの工夫
同じ内容でも「どう食べるか」で血糖の上がり方は変わります。
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野菜 → 主菜 → 主食の順に食べる「ベジファースト」
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よく噛んでゆっくり食べる
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間食はナッツや無糖ヨーグルトなど低GI食品を選ぶ
忙しい方でも工夫次第で血糖コントロールは可能です。
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外食:定食スタイルで、主食は少なめ、野菜多め
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コンビニ:サラダ+おにぎり1個+サラダチキン など組み合わせて調整
飲酒について
アルコールはカロリー源ともなりえます。したがって飲みすぎは高血糖や体重増加の原因になります。
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ビールや日本酒は糖質が多め(醸造酒がこれ該当します)
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焼酎やウイスキーのような蒸留酒を少量に(蒸留酒がこれに該当します)
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飲むなら「適量」「週数回」に留める(糖尿病と関係なくとも、「適量」を^^)
継続のために大切なこと
糖尿病の食事療法は「制限」ではなく「工夫」です。(←これ、重要です。)
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無理な糖質制限ではなく、バランスを意識
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完璧を目指すより、継続できる工夫を取り入れる
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家族と一緒に実践すると続けやすい
管理栄養士による栄養指導を受けると、より自分に合った食事の工夫を学ぶことができます。職場の特定健診に関連した栄養指導などを受けられる機会があれば、ぜひ活用してください。
まとめ
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糖尿病における食事療法は、血糖コントロールと合併症予防の基本
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栄養バランスと食べ方の工夫で血糖値の安定化を目指す
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続けやすい工夫を取り入れることが成功の鍵
糖尿病があったとしても食事の満足度を諦めない。どのような食事のバランスが体にとっても健康的で、人生の楽しみとしての食事でもあるのか。当院では一緒にそんなことも考えます。お気軽に受診・ご相談ください。